*ふわり、はつこい*

─7月下旬─


高校に入って初めての夏。

照りつける太陽に、私は目を細めた。


「ごめん、遅れた!」


その声に後ろを振り向く。

そこには、


「速水くん。うぅん、大丈夫だよ」


夏休みに入って、今日は速水くんとデートすることになった。

速水くんは汗だくなのに、なぜか爽やかな匂いがした。


「速水くん、香水つけてる?」

「んあ?あ、おう」

「へぇ、なんの?」

「ライオンハート」


そっか、だから。


「三瀬もいっつもいい匂いしてるよな。つけてんの?」

「うん、一応ね」