私は俯いていたから、先輩の表情は分からない。

先輩は何も言わない。

ただ、私の泣き声と鼻を啜(すす)る音だけが、時間を動かしている感じがした。

沈黙を破ったのは、今度も先輩だった。


「ごめん・・・」


私の体に重く圧(の)し掛かるその言葉。

息が上手く出来なかった。


「俺、付き合ってる子がいるんだ」


先輩はそう言って私を横切り、みんなが休憩している所へ行ってしまった。

私はただ棒立ちで、動くことさえ出来なかった。


「・・・・・・」


きっと、心のどこかで小さく、本当に小さくだけど、期待してたんだね。

もしかしたら、先輩も私のこと好きなんじゃないかなって。

こんなに優しくしてくれるのは、私が特別なんじゃないかなった。


「っう・・・ふっ・・・ぁ」


でも、違ったんだね。

先輩には、私じゃない女の子が特別だったんだ。