「あ、あの・・・せんぱ・・・」


先輩は無言で歩いていく。

つれて来られたのは、みんなが休憩している所より少し離れた人気のない場所。


「「・・・・」」


しばしの沈黙が私達を包む。

先に口を開いたのは先輩だった。


「・・・こないだの、ことなんだけど」


私は一瞬、頭にハテナマークを浮かべた。

だけどすぐに思い出した。

"こないだのこと"とはきっと、あの抱き締められた日のこと。


「ぁ・・・」

「あれに深い意味とか、ないから。忘れてほしい」


冷たく言い放たれたその言葉に私の体は凍り付いた。

先輩は目も合わせてさえくれない。

じわっと涙で視界が滲んだ。