「そ、そうなんですか」

「心向ちゃんは祭りの練習かなんかの帰り?」

「あ、はいっ。そうです」


辺りが暗くてお互いの顔がハッキリ見えないから少し普通に話せるんだろうな。

きっと昼間だったら噛みまくって、どもっていたと思う。


「そっか。お疲れ」

「ありがとうございますっ。先輩もっ」

「おう。じゃ、俺そろそろ帰るな。暗いから、気をつけろよ」


すると先輩はペダルに足をかけると、手をひらっと仰ぐようにして振った。

私も持っていた笛をブンブンと振り回しながら手を振った。


「・・・・・ッ」


嬉しくて、嬉しく嬉しくて、涙が出そうだった。

久しぶりに先輩と話せたっ。しかも手振ってくれたっ。しかもしかも何回も名前呼ばれちゃったっ。

口が自然とにやけてしまうのを私は必死で阻止した。