こっそり連れ入れられた本邸。扉から見えない角度で物陰に隠れて待つ私を確認して彼は扉をノックする。
扉から顔を出したのは久しぶりの母で、私はつい飛び出したくなる気持ちを抑えて会話に耳をやった。すると、彼は私に会いに行ったのだと母に告げ、その言葉に母が息を飲んだのが分かった。
そしてその直後、信じられない言葉が耳に入ってくる事になる。
「あの子に関わってはいけないと言ったでしょう⁈ あの子のところなんか行ってはいけません！あの子とあなたは違うんだから！」
……え？
思考が、停止する。
呆然とした。そして、あぁそうか、と理解した。
すっかり顔を見せなくなった理由を分かっていたはずなのに、それなのに感じるこの虚しさは…そう。まだ母を信じていた私そこに居たという事。母はきっと何か理由があって来れないんだと思っていた私がどこかに居た。…でも、その全てが今崩れ去る。
『あの子とあなたは違う』
確かにそうだと思うけれど、でもそうしたら、同じあなたの子供だと認められないとしたら、一体私は誰の子供になるの…？
もうきっと、私が母の子供だった頃には戻れないのだと気づいてしまった。気づいてしまった瞬間…私は、家を飛び出していた。
