ここに在らず。



「そのためにもね?もう少し勉強して貰いたい事があるから、これからはまたここに戻ってきて貰おうと思うの」


トウマさんは言っていた。今私達が傍に居る事は、私の人生の中でほんのひと時に過ぎないと。


「また昔に戻るだけだもの、大変な事じゃないわよね?あ、お部屋もまた元通りにするし、何も心配はいらないわよ。だから何も気にしないで戻ってきてくれれば、それでいいの」


確かに、確かにその言葉に間違いは無かった。あれは私の人生の中でほんのひと時の奇跡。…でも、その一瞬が、私という人間を大きく変えてくれた。


「トウマさんには私から連絡しておくから安心してね。あなたはもうここに居るだけでいいから。これからもずっとそれは変わらないのよ?」


どんな場所にいたって、どんな状況下だって、幸せは私の中からも生まれる。与えられるだけじゃない、私自身でも生み出す事が出来るものだと、私はもう知っている。


「あなたはここに居るべきなの。ここがあなたの居場所だから」


だから、私があなたに貰った幸せを忘れない限り、きっとここでも私は幸せになれる。私は幸せを生み出す事が出来る。


だってここは…私の居場所だから。



「…分かりま、」

「それは困りますね」


「……え?」