「……え?」
驚きのあまりに私は、自分の意思とは別の所で思わず聞き返す。するとニコリと微笑みを貼り付けまま、「聞いてくれてたみたいで嬉しいわ」なんて返事をしない私に対してさらりと皮肉を言った。
「実はね、うちでもブランドを立ち上げたいと思ってるのよ。そこで今モデルを探してるんだけど…最近サエちゃん、お洋服のお仕事してるわよね?」
「!」
「業界内でも結構噂になってるのよ、あのトウマさんの所が固定でモデルを使ってるって。今までは専属モデルを持たないでいつも違う子を起用していたから、だからそんなあなたにも注目が集まってるの。きっとあなたが思ってるよりもあなたは有名になってきてるわよ」
「……」
「だからね、就職を考えてるなら一緒に始めましょう?今まで育ってきた所でやる方があなたも気楽じゃないかしら。働く理由だって出来る訳だし、本気で取り組めるんじゃない?」
「……働く理由?」
急に何の事だろうと、私は疑問に思う。私はその言葉が単純に理解出来なかった。今だって理由があるからしている訳なのに、それなのに母は“働く理由が出来る”と言う。そして本気で取り組めるのだと、そこまで言うその理由とは一体?



