そのまま裏口に停められていたハッキリと見覚えのある車に乗せられて、私はそこへと向かう。
何処に向かうのかなんて、言われなくても分かっていた。私の向かう場所は一つしかない。私の世界にはそこと学校の二つしか無かったのだから。
…身体が、震える。
「ーー着きました」
停車した車の外からまわったその人はドアを開けてくれて、私は不自然に大きく動く心臓を抑えながらゆっくりと車を降りた。
「離れでお待ちです」
そう言って私を誘導するその人。誰が?と聞きたい衝動にかられたけれど、聞いた所で恐怖が膨らむだけだからやめておく事にした。とにかく今は、行くしかないのだ。
離れの扉には未だあの頃の鍵がつけられていて、開けばガチャリと扉のもの以外の音がした。ドクリと、心臓がその音に反応した瞬間、私の一歩踏み出す勇気が消え去る。気持ちを決めたつもりだったのに…それはいとも簡単な事だった。
ーー怖い
単純なその感情で、私の頭の上からつま先まで、全てが支配される。
帰りたい。
……帰る事は出来ない。
「サエちゃん?来たの?」
「っ‼︎ 」



