『ーーなんで私にお仕事の事を教えてくれなかったんですか?』
以前私は、そう尋ねた事がある。始めからずっと、今思えば隠すようにトウマさんは、私の前でその話をしようとはしなかった。最近知った彼の求めていた物についてはもちろんの事、ただの仕事内容についてもそれは例外では無かったのだ。
そこまで隠すような事なんて何も無いのにと、色々知った今だからこそ抱いた疑問を尋ねてみた訳だけれど…そこで彼は、思いもしない言葉を口にした。
『…俺の事を色々知って、君に嫌われるのが怖かったから』
『君が居なくなってしまう事が、一番怖かった』
いつもそんな想いを抱いているのだと、トウマさんは言った。…でも、その不安は正直、私からしたらとても無意味なものなのである。
何故なら、私がトウマさんを嫌う事なんて…離れる事なんて、あり得る訳が無いのだから。
「…実は、進路を決めなければならなくてなりまして」
私はそう言うと通学用鞄から例の用紙を取り出した。するとトウマさんはそれを手に取り「進路調査か」と、呟いた。
「そうなんです。もう私も3年生になるので…だからどうしようかなぁと、悩んでいました。早くしないといけないので」
「そんなに焦る事無いんじゃないか?大事な事なんだから」
「それが、提出が…明日までなんです。もう進路がちゃんと決まってなければならない時期で、その確認というか、決まって無いのが可笑しいというか…私がグズグズしていたばっかりに…」
「……とりあえず。君はどうしたいんだ?」



