ここに在らず。



「お!サエじゃん。今日も早いな」


地下の駐車場に車を停めてビルの中へ入ると、ちょうどナツキさんと出くわした。それに私が挨拶をするや否や、「明日撮影入ってんの覚えてるよな?」と、ナツキさんから仕事の予定の確認が入る。


「あ、はいもちろんです。よろしくお願いします」

「あぁ、よろしくな。悪いないつも頼んじゃって」

「いえいえ嬉しいです。他にも何かあったらどんどん言って下さいね、ナツキさんお忙しそうですし」

「あ、分かる?そうなんだよ俺、忙しんだよな本当!あんたもさ、トウマさんとベッタリ一緒だから分かると思うけど、あの人は本当我儘ばっかだからさー」

「…あの…」

「もうトウマさんに名前呼ばれるとギクッとすんだよな。またかよってさ。まぁだからあんたもたまには撮影でさ、あの人と離れて息抜きすんのも大事だろ、真面目な話」

「……」

「あ、これももちろん秘密だからな?トウマさんに知れたらまた何言われるか分かったもんじゃない。あの人の小言はもう、最近はただの嫌がらせなんじゃないかっつーくらい、」

「ナツキ。後で話があるから時間空けとけよ」

「はい。だからさ…って、はいぃ⁈ 」