ここに在らず。



そう、ナツキさん。私がこちらへ来るようになった事で、ナツキさんは私の世話係から離れる事になり、また以前のお仕事へと戻る事が出来たのだ。だから今は仕事場で会う事が普通になって、ナツキさんの仕事の様子を見ることが出来るのだけれど…今までも何と無く感じてはいたけれどやはり。ナツキさんはとっても大変そうだった。

例えば、トウマさんと他の方との橋渡し的役割をしていたり、トウマさんのスケジュールを管理していたり、トウマさんの要望が通るように円滑に進めるための下準備をしていたり。それなのにトウマさんが急に居なくなったり、トウマさんが言っていたことが変わったり、無理難題全て背負う事になったり…と、ナツキさんの大変な事全て、ほぼトウマさん絡みであったりする訳である。それはつまり、トウマさん関連のいざこざは全てナツキさんが背負っている…という事で、ナツキさんを大変にしているのは誰でもない、このトウマさんだという事だ。

でも、見た感じではトウマさんとあんな風に喋っている人はまだ居ないから…多分、そういう事なんじゃないかなと思う。そういう事というのはつまり、ナツキさんがトウマさんと一番コミュニケーションを上手くとれる人で、だから彼もそんな立場の人だという事。そしてそれこそがナツキさんのお仕事だという事だ。

そう、それから分かる事がもう一つ。トウマさんは、どうやら偉い人…というか、立場が上の人らしい。他の従業員の方々のトウマさんへの対応の仕方を見て私がそれを理解するのは、とても容易な事だった。だからナツキさんのあの対応は今なら分かるのだけれど、非常にフレンドリーなのである。あんな感じなのはナツキさんくらいなのである。そんなナツキさんはやはりトウマさんの手となり足となり橋渡し的に動く存在で、だから私の事もきっと上手くフォローしてくれたのだろう。