何も無い私とは違う。彼はずっと、何かを抱いている。奥の方に隠すように、その隠しきれないほどの何かを。どこか孤独の色を持つそれが何なのかがハッキリとは分からない。分からないのはきっと、まだ私が彼に近づけていないという事で、私には近づくためにもやっぱりそれが、必要だという事で。
「……私は、変わりたいんです」
私がそれを口にすると…トウマさんは、傷ついたような、そんな表情をした。
「以前トウマさんは、私が変わる事が寂しいとおっしゃいましたが…私は、変わりたいんです。今の私から変わりたいと思っています」
「…十分変わったよ、君は」
「いえ、ダメなんです。これで満足していたらダメなんです。私はまだ変われると、可能性があると信じていきたいんです。そうじゃないと、私はこのまま立ち止まってしまって、きっと追いつけない」
「…追いつけない?」
「一体誰に?」と、トウマさんは私に尋ねた。空気がピリピリしている。この緊張感は私とトウマさん、どちらが発しているものなのだろう。



