ここに在らず。





ーーガチャリと、玄関のドアの開く音がする。

きた…!と、私は心の中で気合いを入れ直した。


今日に限って、トウマさんの帰宅が遅かった。つまりそれはもうナツキさんはここに居ないという事で、私はトウマさんと一対一でその話をしなければならないと、そういう事になる。


「あ、トウマさんおかえりなさい」


リビングにやって来たトウマさんに私は声をかけた。するとトウマさんは「ただいま。ごめんね遅くなって」と、いつもの通りにソファに座る私の隣に腰掛ける。

うん。いつも通りだ、よしよし。


「今日はお忙しかったんですか?」

「…うん。まぁそんな所かな」

「?」

「…いや、まぁ、仕事というか…その後付き合わされてしまって。でも何とか抜けて来た」