ここに在らず。



本気も本気、私は至って本気だった。もう無理かなと思った事が、ナツキさんの手を借りる事になってしまうけれど現実になろうとしているのだ。私はそのためにならあのトウマさんを説得しようとすら思っている。もしこの経験が出来たとしたら、きっとそれは私の大きな力になる。そしてトウマさんに心からの本当のお礼が出来るのだ。


よし!と私は気を引き締めた。なんとかして説得してみせる!と。するとナツキさんはそんな私の様子を見て、先程の返事と受け取ったのだろう、「い、いやでもアレだ!」と、慌てて口を開いた。


「もしトウマさんが良いって言ったとしてもだ、あんたは本当に出来んのか?日雇いって一日中拘束されんだぞ?しかも知らない奴と知らない場所で急にだぞ?作業がどうとかそんなんは出来るだろうにしてもだな、やっと学校に行けるようになったあんたがそんな環境でなんてやっぱり無理だろ」

「いえ、逆に一日ならきっと大丈夫です。それにもしその一日を越えたら次はもっと長くやってみてもいいかもしれません。それでだんだん慣れていけたら、きっと私はまた一歩成長出来るはずですし、」

「おいおいちょっと待て、なんだよそのポジティブシンキングは!誰だ、一体お前は誰なんだ!」

「?、サエです」

「……」

「?」

「……いや、もういい。分かった。分かったよ」