遡ること、二時間前。

 早瀬に遊ばないかと誘われたから、彼女をキープして他の女にちょっかいかけてるような男とは遊びたくないと言って、教室を出た。


 「お、早瀬ちょっといいか?」

 トイレで髪を直して教室へ帰ろうとしていたあたしの肩を優しく叩く、男。


 「矢口、先生…」

 イケメン。確かにイケメンなんだけど、なんか苦手な進学科の英語を担当している全く関わりの無い先生。28歳だし、なかなか若いから生徒にまぁまぁモテる先生。


 「吉田先生に面談してやってくれって頼まれたんだけどーー今、大丈夫か?」

 断りたい。新任の頃、生徒に手ぇ出してたって噂あったし、てか早く帰りたいし。ーーでも、断る理由が無いんだよね…


 「あ、大丈夫です。」

 ニコッと笑いながら、そう答える。超めんどくさ。


 「じゃ、進路室行こうか。」

 職員室でいいじゃん、とか思いながらも仕方なく頷く。


 「早瀬は細いなぁー。ちゃんと食べてるか?」

 そう言いながらあたしの肩を触る矢口。


 イケメンなんだけど、鳥肌立ちそう。もちろん悪い意味で。てか、触んないでよ気持ち悪い!


 「食べてますよ、早く行きましょ?」

 あー、お腹すいた。帰りたい。だる。