あたし、猫かぶってます。




 「うるさい!!!土足であたしの中に入って来ないでよ!!早瀬に関係ないじゃん!!」


 こんなのただの八つ当たりだ。親友だから、気にしてくれてるのに、あたし最悪じゃん。そう思っているのに、きつくなっちゃう口調。

 可愛くない。今のあたし、全然可愛くない。


 「ほっといてよ!あたしはーーー!!」


 あたしはーー?

 なんて言っていいのか分からなくて、俯く。早瀬の方、見れないや。


 早瀬はちゃんとあたしと向き合おうとしてくれているのに、あたしは逃げているだけだ。自分の内側を知られたくないなんてーーそんなの言い訳だ。


 「前に言ったこと、もう忘れたのかよ。」

 早瀬は怒ったような声で、あたしにそう言う。


 「なに、それ。」

 前言ったことってなに。分かんないし。


 「ーー助けてやるから、ちゃんとぶっちゃけろよ。」


 「っ、!…早瀬には、無理だよ。」

 いくら早瀬でも、過去を変えるなんて出来るわけ無いし。


 「うっせ。お前が決めんな、二位。」

 …なんだと、コラ。


 「勝手にすれば!!帰る!」

 あたしは早瀬を無視してズンズンと歩く。


 「結衣!!!」

 まだなんか用?しつこい。


 「ーー俺は、味方だからな。」


 「っ、」

 バカみたい。早瀬のこんな一言が嬉しいなんて、こんな一言に泣きそうになるなんて。


 バカみたい。