「なんで笑うんだよ。」
あたしが笑ったのが気に入らなかったのか、ブスッとした顔であたしを軽く睨む、早瀬。
「だって、セクハラなんか出来ないでしょ?」
早瀬って王様みたいだし自己中だけど、人の嫌がることは絶対しないし、人を傷付けることも絶対しない。棗ちゃんを泣かせたりも、きっとしない。
「うっせぇ。悪いか。」
自分がセクハラするとか言ってあたしを脅したクセに、あっさりと出来ないことを認める潔い様子にまた笑みがこぼれる。
「早瀬って、バカだね。」
我が道を進んでいて、真っ直ぐで、ちゃんと意志があって、性格的にすごくバカ。勉強では悔しいけど、勝てない。あたしだって頭いいのに。
「俺がバカとか…テストで勝ってから言えよ。」
…こういうとこ、かなりムカつく。でもーー、
「あたし、早瀬みたいになりたかったのかもね。ずっと憧れていたんだと思う。早瀬には、勝てない。」
悔しいけど、勉強も友達関係も恋愛も。早瀬みたいに完璧に出来ない。しかも、早瀬と関わってから確実にあたしは全てにおいていい方に変わってるような気がする。
「大体、お前は可愛いんだから、容姿を利用してもう少し周りを振り回して利用すればいいのに。ーー要領の悪いバカ。」
そんな呆れたような顔で見ないでよ。
あたしだって猫被って都合悪くなんないように仕向けてるし!てか、みんなから好かれんの難しいのに、好かれてるあたしの方が神ってない?
なんて、思ってしまった。言わないけど。

