「変な夢、見ただけ。」

 ただの夢なのに、本当にただの夢だったのに、なんで涙が止まらないんだろう。


 「また泣くのかよ。」

 早瀬は、ハァとため息を吐いてーーさらに強くあたしを抱きしめた。


 「泣きたくてないてるんじゃないもん!!」

 涙を拭いながら、早瀬から逃れようと身体を動かす。なんか悔しい。


 「動くなって!黙って抱き締められていろよ。ーー泣き虫、」

 悔しい、止まれあたしの涙。早く、止まってよ。また、男に甘えてるって言われちゃう。

 「ちょっと疲れてただけだから。ごめん、大丈夫。」


 早瀬とこれ以上居たら、きっと相談しちゃう。早く、早瀬から逃げなきゃ。そう思うのに、


 「俺は結衣じゃねぇし何で泣いてるのかも知らねーけど、そうやって誤魔化されんの、すげー気に入らない。」

 見慣れた不機嫌な表情。逃げれない。


 なんでこんな自己中な奴に安心しちゃってんの、あたし。なんで早瀬に頼っちゃってんの、あたし。


 「今すぐ言わなきゃセクハラすんぞ。」

 あたしの気持ちも知らずに爆弾発言をする早瀬。あたしは一瞬、思考停止してーーーー


 「ぷっ、」

 思わず笑ってしまった。


 早瀬がセクハラとか、似合わなすぎて。どちらかと言うと、早瀬はされる側じゃないのかな?なんて考えてしまった。