あたし、猫かぶってます。



 いいよね、こういうもどかしいけどフワフワしている感覚。胸が苦しいくらいキュンキュンするこの感じ。


 「なに笑ってんのーー結衣。」

 悔しそうな顔の奏多を見て、なんだかあたしの方が余裕みたいな気がしてちょっとだけ勝ったような気分になる。


 恋は惚れた方が負け。っていうけど、両想いの場合はどっちが勝ちなんだろう。


 「負けないよ、奏多?」

 もっともっと頑張ろう。もっと可愛くなって、手放したくないって思われるあたしになろう。


 「俺はもう、負けてるって。」

 奏多の一言一言があたしの胸にいちいち響いて、バカみたいにときめいてるあたし。


 優しいとこ、拗ねたとこ、意地悪なとこ、過保護なとこ、怒ったとこ、色んな奏多を知ることが出来たと思う。それは多分、これからも増えていくんじゃないのかな?

 あぁ、片思いってこんな楽しいんだ。

 今までと違う奏多との距離感にあたしの胸はドキドキしっぱなしで、ワガママなあたしはもっともっとって求めちゃう。あとどれくらい頑張れば幼なじみの壁を越えられるのかな? 


 早く奏多の特別になりたい、でも今のままくすぐったい感じをもうちょっと楽しみたい。矛盾した2つの気持ちがあたしの中でグルグルしていてーーその夜は知奈ちゃんに報告したせいもあって、ドキドキして寝れなかった。