あたし、猫かぶってます。



 性格悪いから彼氏ができないとか、性格悪いから友達出来ないとか、そんなの勝手なあたしの偏見だったんだ。


 ありのままのあたしを好きになってくれる人はすぐ側に居て、幸せは当たり前の中に転がっていた。


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 ーーー5年後


 「結衣ちゃーん、これ終わったら飲みに行かない?」


 「わ~、野山さんじゃないですかぁ。嬉しいんですけど、私、今日は大切な人と約束があるんです。」

 同期の野山をニコリと笑って適当にあしらうあたし。今日もしつこい野山。


 「えー、誰だよ、俺の結衣ちゃんと約束した奴。」

 いつ野山のになったんだよ、なんてツッコミながら愛想笑いをしていると、



 「俺だけど。」

 大好きな彼が、あたしを後ろから抱き締めながらしれっと答える。


 「え、リーダー!?結衣ちゃんみたいな美少女抱き締めてご飯誘うだなんてーー彼女に嫉妬されますよ!?」

 カッと目を見開いた野山は、あり得ないとでも言いたそうな顔をして、そう言う。



 「…結衣、行くよ。」

 ニコッと笑った彼は、野山を無視してあたしの手をグイッと引っ張ってーー歩き出した。


 「お、お先します。お疲れ様でしたー!」

 そう言って、つられて歩き出す。



 「相変わらず嫉妬深いねーーー奏多は。」

 ブスッとした表情の奏多を見て笑えば、頬をほんのり赤く染めていた。


 「明日絶対からかわれるじゃん。あーあ。」

 なんて言いながら頭をガシガシ掻く奏多は、昔と大して変わっていない。



 昼間は部署のリーダーとOL、夜は彼氏と彼女。みんなに秘密で付き合っているこの関係も、悪くないと思っているんだ。


 「ほら、一階着いちゃうよ、早くして、リーダー。」


 「…っ、リーダーって言うな。」


 ーーーチュ


 そして猫をかぶっているあたし達は、今日もキスをするんだ。



 「好きだよ、結衣。」








 あたし、猫かぶってます。(完)