「あ、今日麻紘と帰るんだよね~」
ニヤニヤしながらノロケまじりにそう言う知奈。ちゃっかり可愛いからリア充爆発なんて言えないあたし。
「いいよ別に、あたしだって奏多と帰るし。」
なんてムキになって言い返せば「朔くんじゃないの?」と聞いてくる知奈。
「いや、早瀬とは付き合ってないし。」
「でも、好きなんじゃないの?」
そう言われて、ウーンと唸ってみる。まあ、確かに好きなんだけど、好きなんだけど、なんか、うん。
あたしの席からちょっと離れたところで笑いながら話している早瀬と奏多と麻紘。クラスが違うのにたまに遊びに来る2人。
「なんか、2人とずっと仲良くしていたいんだよね。」
「ーーーその理由、教えてあげようか?」
知奈じゃない、その声に振り向けば。ーー思わず「え、」と声が洩れてしまった。
「…佐伯、さと美。」
あたしの声にいち早く反応したのは奏多で、険しい表情をしながらあたしの元へと向かってくる。
「結衣ちゃんはさ、ちやほやされたいんだよ。早瀬くんも好き、奏多くんも好き、どっちも取られたくないの。小学生の子供みたいに知奈ちゃんも早瀬くんも奏多くんもみーんな縛って私物化して、自分が1人にならないようにしてるの。」
「っ、」
「どれが大切なんて結衣ちゃんは選べないから、みーんな傷付けちゃうんだね。いつ気付くのかなって思ってたんだよね。ずるいよ、結衣ちゃん。」
ニコニコしている佐伯さと美。どれも正論でなにも言えないあたし。奏多と早瀬を選べないのは、事実だ。
「佐伯、なに言ってーーー「奏多、いい。」
佐伯さと美に反論しようとする奏多を止めて、佐伯さと美の目の前に行く。
早瀬にも奏多にも知奈にも、本性ばれてるし。好きな人には全部ばれているんだから、今更隠す必要なくない?
「あたしは知奈も早瀬も奏多も好き。知奈が麻紘とリア充してると寂しいし早瀬が離れたら泣けるし、奏多が佐伯さと美と仲良くしてるとムカつくしーーあたしは、ずるいよ。」
ナニカを簡単に選べたら、こんなに苦労しないし。
「なに、あたし悪いの?ずるくて悪いの?」
開き直りなんて、知ってるよ。タラシでも悪女でもなんでもいいよ、もう。
「早瀬が好きとか奏多が好きとか、あたしにゴチャゴチャ言わないでよ。あたしだって分かんないし、学年一位のあたしが分かんない問題なのに」
「あたしに勝ったことすらない佐伯さと美が知ったように言わないでくれない?」
言われて傷付いて、男の後ろで涙目になってるような可愛い天然な結衣ちゃんは居ないんで。ごめんね、佐伯さと美。
めちゃくちゃスッキリした。

