あたしはずっと高いところに居て、ずっとずっと誰かを見下ろして笑っていた。仮面をつけて、本当の自分を隠してきた。裏切ってきた。


 「知奈、つらかったら離れて良いからね。」

 あたしは、嘘つきだ。


 自分を守るために今までずっと嘘を重ねて来たし、今だってこんな本心じゃないことを口走る。知奈が離れたら、なんて考えたくないのに。


 ーーゴンッ


 「痛っ…!!」

 真顔の知奈があたしのおでこに思い切り頭突き。あまりの痛さにジワリと涙が浮かんだ。


 「結衣、石頭だね。」


 「知奈が頭突きしたんでしょ!」

 なんて睨めば、フッと笑い出す知奈。ワケが分からなくて知奈を見ると、嬉しそうに口を開く。


 「結衣は頭良いけど、大切なことには頭弱いよね。結衣の本当の友達は誰?朔くんでも奏多くんでも麻紘でもない、私でしょ?ーー困っている人を助けるほどお人好しじゃないけど、友達を捨てるほどクズじゃないよ、私。」


 ペラペラと笑いながらそう言えば、余計なことを考えるなと付け足す知奈。



 「ま、結衣ムカつくけど可愛いし仲良くしてあげるよ。」


 「なにキャラ?」


 「結衣の真似してみた。」


 「なにそれ。クオリティー低。」


 「さすが本家。」

 なんてくだらない会話して笑って、教室に帰った。喧嘩したわけでも仲直りしたわけでも無いけど、気持ちがスッキリした。


 それどころか、いつもは気になるすれ違いざま言われる嫌みや陰口も、知奈とずっと笑っていたせいか、聞こえなかった。


 なんだこいつ、魔法使いか。