もしも奏多と結婚したら秋村結衣か。なんか合ってるよね、アッキーとか呼ばれてみたい。早瀬ちゃんよりアッキーの方があだ名的に可愛いし。


 もしも早瀬と結婚したら変わらずに早瀬結衣か。早瀬って苗字自体はなんていうかかっこよくて好きなんだよね。秋村より早瀬の方が強そうなのに結衣っていう可愛い名前のギャップ。

 って、なんであたしどっちかと結婚する気で居るんだろう。


 イケメンなんて、今までたくさん出会ってきたし、早瀬や奏多より優しい人なんてたくさん居たし。可愛いあたしに天然なあたしに優しくしてくれるイケメンはたくさん居たし。…まぁ、ブサメンも居たけど。

 きゅんきゅんなんて、したことなかった。


 優しくされるのが当たり前、可愛がられるのが当たり前、そう思っていた。だってあたし、可愛いし。ーーそんなあたしの曲がった性格ごと好きになってくれるなんて、思ってなかった。


 好きな人のこと考えてベッドで抱き枕を抱き締めながら足をバタバタさせて、キャーキャー言ったりとか、そんなことするくらい恋する乙女キャラじゃないけど。


 多分あたしは、あの人を、幸せにしたいんだと思う。



 「ん…、」

 重い瞼を薄く開いて、携帯に手を伸ばす。時刻は10時半。メールは3件来ていて、知奈ちゃん、クラスの男子、クラスの男子。


 知奈ちゃんのメールだけ開いて、心配メールに返信。男子はまあ、いいや。メール気付かなかったってなんか天然っぽいし。


 「まず、具合悪くないしね。」

 なんて、鼻で笑ってみる。



 「ーーーうん、だろうと思った。」

 笑いながらあたしのひとりごとに返事をするのは、



 「奏多!?」

 なんとも不機嫌な笑顔であたしを見る、奏多だった。



 「俺が結衣の考えていることを分からない訳ないじゃん。」

 そう言いながら、奏多はあたしに近付いた。


 理由は分かんないけど、なんとも不機嫌な顔。思わずヤバい、そう思った。

 奏多は、あたしに怒ってる。