もっと、恋の選択って楽しいものだと思ってた。

 あたし、可愛いし。どっちにしようかな?って男を指さして、一番都合が良い方と付き合う。みたいな?


 だけどなんだこれ、すっごく楽しくない。

 早瀬が離れたら心臓が身体から離脱するくらい痛かったし、奏多が他の女の子と仲良くしていたら、揚げ物死ぬほど食べた後よりムカムカイライラする。


 2人の男の子が大切な場合は、こうなるんだ。

 適当に軽い気持ちで選べないのは、奏多も早瀬も大切だから。それはいいことなんだろうけどーーちょっと、困る。


 「…学校行きたくないな。」

 朝。いつも通り目が覚める。熱は無い。体調ばっちり。けど、気分は最悪。



 佐伯さと美に会いたくない。呼び捨てでいいや、あんな奴。なんて思っちゃうあたしは、性格悪いダメ女。


 「休も。」

 インフルエンザ以来休まずに登校していたけど、朝から奏多の様子伺いながら、佐伯さと美と仲良くしていないか監視してたら、ほんとに悪い女になりそうだもん。



 ママに電話してもらって、奏多にメール。知奈ちゃんにもメールして、ベッドに潜る。


 いつもいい子にして学校行ってたんだから、今日くらい許してよ。

 天然でいい子の結衣ちゃんが学校ズル休みしてアプリ開いてみんなのつぶやき見ているなんて、みんな思わないんだろうな。




 「あー、お腹痛くなってきた。」


 病は気から。とは、このことなのかもしれない。

 誰にも会いたくない、誰とも話したくない、暗い部屋でずっと1人でケータイいじっていたい、なんて引きこもりみたいなことを思いながら、二度寝をした。


 あ、痛いのはお腹じゃなくて胃だ。これはストレスだ。そうに違いない。佐伯さと美のせいだ、あのやろ。

 こんなあたしのどこが可愛いのか疑問で仕方ない。顔は佐伯さと美より可愛くても、性格だけなら佐伯さと美の方が美少女だろう。


 なんて思いながら、寝た。





 ーーーピンポーン



 「すいません、結衣が心配で来ました。」

 まさか、あたしのそんな性格まで理解されてるとは知らずに。あたしは、ぐっすり寝ていた。