近くなって、遠くなって、近付いて、遠ざかる。あたしと奏多の距離は安定しないまま、時間だけが過ぎていく。
「なんなんだろ、あたし。」
部屋で1人。ポツリと呟いてみる。
早瀬が離れるって知って、すっごく苦しかった。ずっと胸が痛くて、涙溢れてきて。ああ、あたしって早瀬が好きなんだって、思った。
でも、今は奏多が佐伯さと美さんと仲良くて、イライラしてる。胸が痛いとか苦しいとかより、イライラ。
『ーー2人を好きなの!!』
そうそう。実際そうなんだよね。
『森田さんは一緒に居て安心するし、間宮さんと会って新しい自分を発見できた。どっちが好きとかじゃなくて、どっちも好きなんです、』
そうなんだよね、どっちかがどうのって話じゃなくて、なんていうの、お母さんとお父さんどっち好き?って聞かれるのと同じなんだよ。
なんて、テレビに映る山内美紀の二股についての記者会見を見て頷くあたし、よっぽど重症なんだと思う。
『ちなみに、山内さんは2人から交際破棄をされたようです。』
ニュースの司会者が、真顔で言う。
まあ、普通だよね。こんな2人好きとか訳わかんない女に付き合ってらんないよね。普通は。
「二兎追っちゃ、ダメなんだ。」
早瀬は棗ちゃんが居るし、奏多には佐伯さと美さんが居る。このままあたしがこんなんだったら、きっと2人ともあたしに愛想つかせちゃうから
傷付けても、ちゃんと選ばなきゃいけないんだ。
あたしが一番大切にしたいと思うのはーーーもう、決まっている。決まっているのに、行動できないのは、2人と離れたくないあたしのワガママ。
「あー、もう。」
モヤモヤした気持ちのまま、ベッドに沈んだ。
奏多のばーか。今頃佐伯さと美さんとメールしてんのかな。
早瀬のばーか。今頃棗ちゃんとイチャイチャしてんのかな。
あたしのばーか。なに恋愛でウダウダ悩んでんの。
なにこれ、リア充爆発とか、言われそう。充実してないけど。

