一度考えちゃうと、グルグルグルグル。ネガティブ連鎖は止まってくれなくて。


 「結衣、?」

 嫌われたくない。


 奏多に、嫌われたくない。


 「なにー?」

 奏多にまで、結衣ちゃんスマイル。本音を吐き出せていた奏多にまで、作り笑いをしているあたしが居て、泣きたくなった。


 「…佐伯とは、去年クラス一緒だっただけだよ。」

 そんなあたしの気持ちを察してか、優しく笑ってそう言う奏多。まるで佐伯さと美さんとは何もないとでも言いたげな、言葉。


 「ほんとに、なんにもなかった?」

 そう聞けば、当たり前じゃんと笑う奏多に、誤魔化されているんだと確信した。


 なんにもなかった相手がキスしてごめんねなんて言う訳ないもん。でも、奏多は多分あたしに知られたくないことなんでしょ?


 「あんま仲良くしないでね?」

 なんて。冗談まじりに言ってみる。奏多からすればなんて自分勝手な彼女なんだろう。それでも、嫌なモノは嫌なんだもん。仕方ないじゃん。


 「もう、話さないよ。」

 優しく笑ってそう言う奏多。


 でもきっとそれは誤魔化しで、さっきチラリと見えた佐伯さと美の返事に『考えさせて』と打った返事からすれば、あたし次第なのだろう。


 「奏多行きたいところある?」

 不安な気持ちを隠して、奏多に問いかける。優しく優しく、奏多の気持ちが離れないように。バカみたいだなんて、あたしが一番分かってる。



 「どこにも行かなくていい。」

 相変わらず笑いながら、ごく自然に返事をする奏多。


 「え、行きたいところとかないの?」


 「まっすぐ帰りたい。なに、結衣優しいけど、どうしたの?」

 そう言いながらあたしを見る奏多をあたしは怖くて見れない。見たら気持ちを見透かされそうで。


 「疾しいことでもあったりして?」


 この気持ち、隠し通せる自信が無いから。





 「ないよー!」

 カラカラと笑いながらそう言ってみたら、心が鈍く痛んだ。