「で、麻紘と付き合うことになった。」


 「へー、麻紘ねぇ?」

 ニヤニヤしながら私の話を聞く朔くん。ノロケている訳でもないのに、何でこんなにニヤニヤされなきゃいけないんだろう。


 「だから、朔くんも結衣と頑張って。」

 そう言えばカラカラと笑っていた朔くんから笑顔が消えて、まるで会社をリストラされたサラリーマンのような表情になった。


 「だから、俺はもう、」


 「彼女居たって他の人に気持ちがある状態で大切にできるわけないじゃん。朔くんはバカだね。」

 頭良いくせに、なんでこんなに簡単な答えが分からないんだろう。朔くんがやっていることは、誤魔化しでしかないのに。



 「結衣って何気に周りを大切にする奴じゃん?」

 死にかけの朔くんが、ハハハと笑いながら話す。


 私は朔くんのなにを見てカッコいいと思ったのだろう。こんなにネガティブで決断力の無い男をカッコいいと思っていた自分にビックリ。

 かと言って麻紘も私のタイプじゃないんだけど、あれはあれで可愛い。



 「だから、結衣は奏多を傷付けたくなくて選んだんじゃん?」

 つまり、そういうことだろ…と笑う朔くん。そんなこと言いながらもどこかで諦め切れて無いじゃんか。


 「…先に勝負に出れば良かったのに。」

 そうしたら、多分結衣は朔くんを選んだのに。


 「棗と付き合えば結衣と友達として仲良くできると思っていたけど、今度は気まずくて話しかけらんねーよ。」


 なんてウダウダ言いながら机に突っ伏していたくせに、その翌日「結衣と友達に戻った」なんて朔くんがニタニタしながら言うから、

 私はもう訳が分からなかった。


 ネガティブなくせに、変な行動力あるとか。



 そしてこの日から、周りに対する結衣を見る目が変わっていった。いい方にも、悪い方にも。