あたし、猫かぶってます。



 「優しいところに惹かれたなんて、餌付けされた猫みたいって自分でも思った!自分に都合良いから麻紘くんに惹かれてるんだって、言い聞かせてきた!」

 なんか、告白っていうより、言い訳してるみたいだな。なんて自分に呆れながら私は続ける。


 「でも、冷静に考えても麻紘くんにドンドン惹かれていたし、朔くんよりずっとずっと好きになっちゃったし。」

 この位置が居心地良すぎて、私はいつの間にか甘えることしか考えなくなったんだ。


 「え、ちょ、斎藤?落ち着いて。」


 麻紘くんは焦りながら振り向く。

 勢い任せで紡ぐ私の言葉には、可愛げなんて無くて。やっぱり私、可愛くないなって改めて自覚した。

 「付き合って喧嘩して別れて気まずくなるくらいなら付き合いたくないって、思った。けど、」




 「麻紘くんが私以外のところ行くのは、もっと無理!!」

 その言葉を発した瞬間、麻紘くんがゴクリと息を呑む音が聞こえた。麻紘くんは今、どんな気持ちなんだろう。


 「斎藤。ごめん、」

 ドキリとして、麻紘くんの次に発する言葉を待つ。


 良い意味でのごめんなのか、悪い意味でのごめんなのか。多分次の言葉で明らかになる。ギュッと目を閉じて麻紘くんの言葉に神経を尖らせる。ーーーと、



 ーーーチュ、

 優しくやんわりと触れる、例えるならはんぺんみたいなモノ。びっくりして目を開ければ、薄く目を開ける麻紘くんと目が合う。



 「……遅いよ、知奈。」

 その言葉に、全ての意味を理解した私。



 「ごめ、麻紘く…っ、!」

 ニコリと笑った麻紘くんを見て、今は謝罪の言葉なんかいらないのだと、そう言われているような気がした。



 「麻紘くんじゃないーーー麻紘、でしょ?」

 やばい。どうしよう、近い。でも、嫌じゃない。



 「ま、ひろ…」

 そう呼べば満足そうに笑った麻紘が私を優しく抱き寄せて、私の耳元に小さい声で囁いた。



 「いい加減付き合ってよ、知奈。」

 その、最後の告白に、今度はくだらない意地も屁理屈もナシに、純粋に自分の気持ちに従ってーー頷いた。


 「知奈、泣きそうで可愛い。」


 「うるさい、ばか。」

 そして私は背伸びをして、麻紘にキスをした。



 「麻紘、真っ赤で可愛い。」


 「うるさい、ばか。」