「斎藤ー」
いつものように、私を呼ぶ麻紘くん。クラスが違うのに、毎日のように私に会いに来る麻紘くんを見ると胸がちょっとキュッとする。
私達のこのよく分からない関係は、いつか終わっちゃうのかな、なんてガラにもなく考えて。ガラにもなく胸が締め付けられている。
付き合いたい、けど、別れたくないから付き合いたくない。
それならずっと友達でいいけど、いつか麻紘くんに好きな人ができたら、困るし。
だから、決めた。
「斎藤好きだよ。」
「…はいはい、分かったから。」
あと一回。あと一回、多分明日、私に気持ちを伝えてくれたら、ちゃんと私も気持ちを伝えよう。別れたくないから付き合いたくないって思ったことも、ずっと麻紘くんに惹かれていたことも。全部打ち明けよう。
そう、思ったのに、
「本当、俺って諦め悪いよね、」
いつもとは違う、自信無さげに笑った麻紘くん。雰囲気が、違う。なんとなく、いやな予感する。
「そんな、いつも、嬉しいよ?」
焦ってそう言うと、切なく笑った麻紘くんは小さな声で、私に告げた。
「斎藤の優しいとこ、大好きだけどすっげー残酷。」
やばい。そう思ったときにはもう遅い。
「毎日振られてる子に言われたって、説得力ないよ。」
傷付いた顔した麻紘くん。私が、傷付けた。
「もういいや、ーーー帰る。」
あと一回、なんてバカだ私。麻紘くんはいつだって私に気持ちをまっすぐ伝えてくれたのに。傷付くのが嫌で逃げていたのは私の方だ。
「待って!!!」
ここ数日で一番大きな声を出して、麻紘くんの制服の裾を掴んだ。期待させるだけさせて麻紘くんの気持ちに甘えていたのは、私が悪い。けど、
「私だって、本当は麻紘くんが好きだった!!」
この気持ちは、本当だから。
嘘ついて誤魔化して逃げてごめんなさい。本当に本当に本当に、麻紘くんが大好きなんです。

