それから、全校集会の帰りとか、移動教室で麻紘くんの教室の前を通るときとか、なんとなく探してしまうようになった。
別に好き好き大好き愛してるみたいなフィーバー状態じゃないけれど、なんとなく、まぁ。そういうことなんだと思う。
私はいつも、麻紘くんを見つけると、わざと麻紘くんの目の前を知らない振りして通ってみる。まぁ、好きだとは言え話しかけたりなんて、絶対しない。
「あ、斎藤じゃん。」
だって、私が話しかけなくても麻紘くんがガンガン来るし。
「あ、麻紘くん。」
居たの?みたいな雰囲気でそう言ってみる。だって、好きって分かりやすい態度取るなんて、わざとらしいし。
「俺、斎藤だって、一瞬で分かったよ。」
得意気に笑う麻紘くんは、私がキュンとしていることなんて知らないだろう。まぁ、教えるつもりもないけれど。
「ストーカーみたい。」
そう言って笑えば、麻紘くんもつられて笑う。
うわ、今の私。超恋してる。今の私、すっごい青春してる。なんて、改めて思ったりした。多分、これが恋愛してるって言うんだよね。
「あー今日も斎藤好き。んじゃ。」
いつもみたいに、私にさりげなく告白して、ほんのりほっぺたを染めながら逃げていく麻紘くんには、あとから意味を理解して改めて照れた私の顔なんて、映らない。
「好きだ、ばか。」
…なんて、本人には言えないから、いそいそと戻っていく麻紘くんの背中にそっと言葉を投げてみた。

