あたし、猫かぶってます。



 「なんで、朔くん!!」


 「…俺が、結衣を追いかけたって、泣くのは結衣だろ…?」

 熱くなる私とは対象的に、悲しそうに笑いながらそう言う朔くん。こんな風に、自信が無い朔くん、初めて見た。


 「…朔くんは、後悔してないの?」

 してないよ、きっと朔くんはそう答えるんだろうな。めちゃくちゃ後悔してるような顔をして。



 「ーーーしてるよ、」

 けど、私の予想とは違って、ちょっと反抗的にそう言った朔くん。

 私が予想していた、強くて完璧な朔くんじゃない朔くんは、なんだか朔くんらしくなかったけれどーーこれは、結衣が好きな本当の朔くんなんだ。



 「結衣に、もっと優しくすればよかった。」

 笑いながら、そう言う。…笑えてないよ、ねぇ。



 「結衣ともっと話しとけばよかった、一生分。」


 「結衣のこと好きってたくさん伝えればよかった。」


 「ーーー棗に、甘えなきゃ、よかった。」

 最後にそう言って、俯く朔くん。


 「嫌われた、かも。」

 何言ってんの、こいつ。何言ってんの、こいつ。何言ってんの、こいつ。何言ってんの、こいつ。

 嫌いじゃないから、嫌いになれないから結衣があんなに痛がってるんじゃん、本当ーーー

 「本当、朔くーー「やめとけ、斎藤。」

 後ろから、冷めたような声がする。



 「…麻紘、くん。」


 「奏多と結衣の邪魔、してやるなよ。」

 朔くんも、麻紘くんも。分かってない。


 結衣の気持ち、ぜんっぜん分かってないよ。