あたし、猫かぶってます。

 

 ーーーそして、翌日。

 朔くんに一喝入れてやろうと思って、早く学校に来た私。実際は、一喝といっても、優しく言うけどね。睨まれたりしたら怖いし。


 「あれ?」

 廊下を1人で歩いていると。ふと、貼り紙の前に誰かが居ることに気付く。


 別に順位を見に早く登校する生徒も居るし、不思議なことではないのだけれど、ーーその誰かが、なんだか結衣に似ているような気がした。


 貼り紙の近くに行くと、明るいふわふわロングの女の子が、背伸びをしながら貼り紙に何かを書いている。その後ろ姿は、結衣そのもの。

 「くそ早瀬…」

 そう呟いて、自分の順位のところを指でなぞる。ーーー確実に、この子は結衣だ。


 でも、なんで結衣がこんな早くに登校しているのだろう?なんて考えていたら、クルッと方向を変えてこちらに向かってきた結衣。


 慌てて近くの空き教室に入り、隠れる私。



 結衣が去った後、貼り紙のところへ行き、何を書いていたのか、見てみた。


 「ーーっ!!!」

 そして、まぁ、驚きました。



 《大好きでした。》

 シャーペンで書かれた文字。丁寧ですごく不器用な結衣の字。やっぱり両想いだったんだ、この2人。



 何度も何度も消しゴムで消した痕があって、背伸びしながら書いていたからか、文字が少し震えていた。


 結衣も朔くんが好きだった、なんとなくそんな気はしていたけれど、その疑惑が、事実になった。不思議とショックは無くて、その代わりに、熱い想いが私の胸を満たした。


 ーーーカシャッ

 私はそれを写真に撮って。朔くんがいつもサボっているらしいと誰かが言っていた、鍵のかかっている屋上へと、走った。

 両想いなはずの2人が、なんですれ違っているんだろう、わからない。朔くんを好きなはずの結衣がなんで奏多くんと付き合っているんだろう、わからない。



 このモヤモヤを解くのは今しかない、そんな気がした。

 結衣の恋心が消えちゃう前に、実らせてあげなきゃいけないんだって、そんな気がした。



 だから、私は走った。


 愛する親友の為に走る、メロスみたいだと思った。