あたし、猫かぶってます。



 「田崎くんが、私を好き?」


 「うん、そう。俺が斎藤を好き。」


 「あ、そうなんですか。」


 「うん、そうなんですよ。」

 なにこれ。


 とりあえず、さっきまで止まらなかった涙も、田崎くんの言葉で引っ込んだ。本当に、なんていうか拍子抜けだ。


 「えっ?」

 ていうか、好きって。え?


 「え?」

 ああもう、私の言葉にいちいちこう反応するのはやめて欲しい。顔を赤くすらしない田崎くん。慣れてるのかな。


 「男の子って、顔赤くなったりしないんだね。」


 「え、」

 そう言えば、今度はみるみるうちに赤くなる田崎くんの顔。タイミング、おかしくない?



 「ーーーああもう、赤くならないように必死に違うこと考えていたのに。」

 そう言ってうなだれる田崎くん。ちょっとだけ可愛い。



 「斎藤だって、ドキドキとかしないわけ?」

 私をじっと見る田崎くん。そういえば私、びっくりしていたけれど、ドキドキはしていない。

 それもそうか、好きな人の告白じゃないもん。



 「多分、私まだ朔くんを諦めれないんだと思う。」

 胸の痛みはさっきよりも柔らかくなったけれど、朔くんを想う気持ちは、全然柔らかくなってくれない。


 「だから、田崎くんの彼女には、なれません。」

 そう言えば、優しく笑う田崎くん。



 「ん、了解。」

 こういうところ、優しい。田崎くんには、もっといい恋して欲しいな。



 「なら、明日も伝えに来るから。」

 そう言って、ニコリと笑いながら教室を出ていく田崎くん。



 ーーーあれ?

 「…ちょっと、展開おかしくない?」


 田崎くんを振る→友達としてよろしくね。とかじゃないの?てか、なんか。いや、違う!おかしいでしょ!!