それから、結衣の過去を知った。結衣が中学の時どんな気持ちで学校行っていたんだろうとか、結衣は今でも苦しめられているんだろうとか、たくさん考えた。


 私が体感したあの冷めた空気を結衣はずっとずっと耐えてきたんだ。悩みが無い、なんて全然違う。悩みがあっても言えなかったんだ。

 駅でかつての親友に会った結衣は、今にも泣きそうな顔をしていた。こんな結衣を見るのは、多分初めて。


 結衣の親友は、田崎くんの元カノで、田崎くんが結衣を好きになったことがキッカケで、結衣を孤立させたらしい。

 一見、くだらないと思うことだけれど、結衣はずっとこの事実に苦しんで、人と向き合うことが出来なかったんだと思う。


 孤立した時の苦しみは分かるし、今すぐにでも結衣を安心させてあげたい。けど、


 「朔くん、結衣追いかけて。」

 きっと私じゃない。行くのは、私じゃない。


 驚いた表情の田崎くん。そりゃあそうだよね。きっと田崎くんは私が朔くんを好きだって、気付いてる。



 「今、結衣に必要なのは、朔くんだよ。」

 親友と恋人、どっちを取る?なんて究極の選択。もちろん相変わらず私は恋人を取るけれど。



 大親友は、別でしょ?


 「ーーーサンキュ、斎藤。」

 ニコリと笑った朔くんが、結衣のところへ走っていく姿に涙がポロポロと零れた。







 「斎藤、頑張ったね。」

 優しく私の手を握り締める田崎くんに甘えたって、今だけはバチが当たらないような気がした。


 「あの二人、お似合いだよ。」

 そう言えば田崎くんは切なそうに笑って、こう言った。



 「俺は奏多と幸せになって欲しいけどね。」

 その表情が意味深で、なんとも言えない気持ちになった。



 結局、田崎くんに送られて私は家に帰った。ついでにアドレスを交換した私達は、結構マメに連絡を取るようになった。