「大体、斎藤も斎藤で結衣が大好きなんだろ?」
涙が引いてきて、ふと顔を上げると、無邪気に笑う朔くんが、そう言って私を見た。
「お前ら本当に仲良しだな。」
あまりに優しい表情でそう言うから、朔くんがどれだけ温かい人かが、じんわりと伝わってきた。
「仲良しだったら、こんなこと思わないよ。」
私がもっと優しい人だったら、そもそも結衣を邪魔なんて思わないし、こんなにドロドロした気持ちにもなったりしなかった。
「斎藤、バカ?」
そんな私の返答を聞いて、呆れたようにそう言う朔くん。
「お互い大好きで仲良しこよしやってるだけなら、結衣じゃなくてもいいだろ?」
真剣な表情で、でもどこか優しい表情でそう言う朔くん。
「結衣と出会えたから、斎藤は自分と向き合うことが出来たんだから。それだけで充分なんじゃね?」
その言葉に、今までずっと胸の奥に溜まっていたモヤモヤが、消えていったような気がした。
結衣と出会って、朔くんは変わった。優しくなった。
じゃあ私は、変われるのだろうか?私が好きな自分になれるのだろうか?他人に好きになってもらえるのだろうか?
「俺も結衣も麻紘も、斎藤が好きだよ。」
いや、違うよね。実感していなかっただけで、気付いていなかっただけで、もうとっくに好かれていたんだ。
「私も、みんなが大好き。」
変わろう。努力しよう。大切な人を大切にできる人に、なろう。

