そして、結衣と朔くんと、朔くんの親友と一緒に過ごすようになった私。

 挨拶くらいしか出来ないほどに遠かった朔くんとの距離がドンドン近付いて、純粋に嬉しかった。嬉しかったんだけど、


 「ゆーいっ、」


 「………」


 「無視すんな、こら。」


 「早瀬が奏多だったらなぁー、」

 朔くんの視線の先はいつも結衣だけで、結衣も結衣で朔くんと居る結衣はいつもより生き生きしていて。疎外感を、感じてしまった。


 結衣は大好き。でも朔くんも好き。結衣と朔くんが仲良くしていると、なんか仲間外れになったような気分になる。けど、結衣には言いたくない。

 これを言ったら、きっと結衣は傷付いたような顔をして、気を遣うように謝ってから笑うんだろう。結衣は、悪くないのに。


 「斎藤、なんかあった?」

 そんな中、私を気にかけてくれたのはーー朔くんの親友の田崎麻紘くんだった。



 「え、?」

 そんなに私、つまらなそうな顔をしていたのかな。なんて思いながらも、誤魔化すようにヘラリと笑えば、急に真剣になる田崎くん。


 「結衣は、誰よりも斎藤が好きだと思うよ。」


 普段、《結衣ちゃん》と呼んでいる彼が、小さい声で《結衣》と呼ぶのに、すごく違和感を感じてしまった。

 結衣のことを《結衣》と呼ぶのは、幼なじみの奏多くんと、朔くんくらいだったからーー同中とはいえ、不思議だった。



 「あ、奏多から電話だ!」

 そう言いながら、ほんのり頬を赤く染める結衣を、面白く無さそうに見る朔くんに、胸が痛くなる。だから、


 そんな私を田崎くんが切なそうな表情で見ていたなんてーー知るよしも無かった。