中2の時に付き合っていた山村くんは、別れた時もそんなに気分落ちなかったし、振ったりするのも罪悪感とか無かったのに。
むしろいい夢見せてあげたよね、みたいな無駄に沸いてくる自信さえもあったのに。成長って、怖い。
早瀬と関わるようになってから、不思議と物事を卑屈に考えたりすることが少なくなって、人と関わるのが楽しいって思えるようになったけど、
何かをこんな真剣に考えても、結局はあたしが傷付けちゃうし。嫌になっちゃうよね。
「好き」とか。「嫌い」とか。「好きになりたい」とか。「嫌いになりたい」とか。「裏切れない」とか。「許されない」とか。
難しいことばっかり考えちゃって、頭イカレそうなんだけど。
「早瀬くんが好きなのも分かってるから、大丈夫だよ。」
そう言いながらあたしの背中をポンポン叩く、誰よりも優しい奏多をーー傷付けている。
奏多の口から早瀬の名前が出ただけなのに、ビクッと反応してしまう、あたし。その反応が、きっと奏多を傷付けている。
「奏多ーーーキスして。」
そんな奏多の顔が見たくなくて、ギュッと目を閉じて、そう言う。
キスしたいだけのビッチとかじゃないけど、早瀬のことも考えたくないし、奏多の悲しそうな顔も見たくないから、あたしはキスを求める。
残酷過ぎる。結局はどっちも好きだから、バカみたいにどっちも好きだから、早瀬が居ないという虚無感があたしをどこまでもどこまでも追いかけるんだ。
きっとこの心にポッカリ空いた穴は、奏多と何回優しいキスを交わしても埋まらないのだろう。
ーーーちゅっ、
軽いリップ音に、さっきまであたしにキスをしてくれた優しい奏多の唇が動いて、残酷な言葉を残す。
「そういえば早瀬くん、ヨリ戻したんだよ。」
もう傷付く資格さえも、あたしには無い。

