ーーーガチャッ

 「朔…っ!?!」


 チャイムも鳴らさないで家に入って来た棗。そして、ノックもしないで部屋に入って来た棗。


 …不法侵入者みたいだよ、お前。

 なんて冗談も、不安げな表情で俺を見る今の棗には多分冗談に聞こえないんだろうな。


 「朔が生きていて、よかった。」

 そう言ってギュッと俺を抱き締める棗の肩が震えていてーーなんとなく、棗の気持ちに気付いてしまった。


 「…大袈裟、離れろ。」

 そう言えば、ゆっくり俺から離れる棗。棗は、俺が嫌がることは絶対しない。


 結衣みたいにビービー泣かないし、ちゃんと言うことを聞いてくれるし、俺の性格を理解しているし、普通に可愛いしーー結衣なんかより、何倍も良いところがある。のに、


 「俺さ、結衣を諦めたいんだ。」

 諦めたい、けど諦められない。ムカつく。


 「何があったの?」


 「っ、」

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 俺は全て、棗に話した。結衣に振られたこと、結衣を諦めると言ったこと、結衣を泣かせたこと、奏多を傷付けていたこと。

 罪悪感、そしてどうしようもない自分の感情。全部全部、話した。



 「朔。」

 話を聞いた棗は、ふわりと俺の頭を撫でて、口を開く。


 「結衣と奏多と、元通りになって、朔が許される方法ーーあるよ。」

 そして、その方法が《棗と付き合う》ことだったんだ。