あたし、猫かぶってます。



 「結衣、昨日遅くまで勉強してただろ?」

 落ち着いたあたしは、なぜか保健室に連れて行かれる。職員会議しているのか、先生は居なくて。目の前には怒っていない、困り顔の早瀬。


 「うん。」


 「やっぱり。顔色悪すぎ。」

 そう言って、あたしに体温計を渡す早瀬。

 もしかして、さっき帰れって言ったのもあたしが顔色悪かったから?なんて。都合良く考えてしまう。


 「なんで、怒ってたの。」


 「…怒ってねぇよ。」

 嘘。絶対怒ってた。早瀬は絶対怒ってた。


 「うそ。」


 「…だって、教室の前でチャラい奴に囲まれてヘラヘラしてたし、具合悪いのに学校来るし。」


 「え、」

 何を言い出すかと思えば。


 「ヤキモチだよ、ごめん。あと、無理すんなよ、テスト勉強とか。俺もしないから、結衣も今日はしないで休め。」

 そう言って、あたしの頭を優しく撫でる。


 「ーーーなんだ、よかった。」

 早瀬に嫌われたかと思った。かなり不安だった。いきなりああいう風に冷たくなるから、また拒絶されたのかと思った。


 「泣くなんて思わなかったって言えば言い訳だけど、マジごめん。ヤキモチ、気をつけます。」


 めずらしくあたしに頭を下げる早瀬。なんか、可愛い。


 「言い訳していいわけー?」


 「結衣、そのギャグつまんない。」

 そう言って、早瀬が笑うから、あたしもつられて笑った。



 そして熱があったあたしは早瀬に言われたとおり素直に早退して、病院へ行った。病院は行くつもりなかったけど、早瀬が行けってうるさかったから、一応ね。


 ーーー「インフルエンザですね。」


 医師の一言にびっくりする、あたし。インフルにかかっていたみたいだ。本当、あたしも気付かなかったのに、よく分かったね、早瀬。