結衣に電話して、早瀬くんが結衣の異変に気付いて、場所を聞き出している途中に電話が切れて。


 焦っている俺に対して、早瀬くんは冷静だった。

 「ーーーもしもし。遼くん、」


 走っているのに、息1つ切らさずに電話をする早瀬くん。俺なんて、焦ってるだけなのに。


 「遼くんの読み、当たってた。矢口、結衣に迫ってる。もう時間が無い、力貸して。お願いします。」

 王様で、自己中で。性格悪そうなイケメンランキング1位って言っても過言では無い早瀬くんが。あの、早瀬くんが。

 結衣のことで、他人にお願いしてる。プライド高いくせに、なんだよそれ。めちゃくちゃカッコいいじゃん。


 「ーー分かった、ありがと。」

 そう言って早瀬くんは電話を切る。


 「奏多、俺さ、やっぱり結衣が好きだわ。」

 知ってるっつーの。早瀬くんがこんなに一生懸命になっているのは、きっと結衣だからだろ?



 「奇遇だね、俺も結衣が好きだ。」

 きっと俺は運が悪い。こんなイケメンと戦わなきゃいけないなんて。こんなイケメンが恋のライバルだなんて。

 でも、譲れないんだから仕方なくね?


 「今は一時休戦して、一緒に“カス矢口”から結衣を取り返さねぇ?」

 ニヤリと笑って、そう言う早瀬くん。


 「俺も同じこと考えてた。」

 早瀬くんには負けたくないけど、絶対負けたくないけど。結衣が俺以外の誰かのモノになるなら、早瀬くんがいい。


 「俺に考えがある。」

 そう言って、早瀬くんはさっき電話の相手と考えたであろう作戦を話す。




 「あ。俺、結衣が俺以外のモノになるとしたら、奏多以外認めねぇから。まぁ、奏多にも渡さねぇけど。」

 最後にそう付け足して、昇降口のドアを開ける。


 …俺と同じこと考えてんなよ。なんだこれ、にやける。