「男だから中々1人でアイス食いに行けないんだよね。たまに麻紘誘うけど、あいつショコラブラウニー派だからさ。話が合わない。」

 拗ねたようにそう言う早瀬くん。クールで自己中なイメージが強かったせいか、変な感じがする。てか、アイスに話が合うとか、あんの?


 「何のアイス好きなの?」


 「ストロベリーぴゅあホワイト!あれが一番好き。」

 店独特の、男なら言うのを躊躇ってしまうような恥ずかしい商品名を笑顔で言う早瀬くん。しかも、結衣がいつも食べてるやつだし。


 「結衣も好きだよ、それ。」

 なんか早瀬くんに結衣の話すんのアレかな。なんて思いながらも、会話を続ける俺。


 「そうなんだー」

 案外、どうでもいいと言った感じの声。え、なかなりに、喜ぶとか、しないの?ーーなんて思いながら早瀬くんを見ると。


 「…早瀬くん、にやけすぎ。」

 にやけるのを必死で我慢しているような表情。嬉しさを隠しきれていない。


 「アイスぐらいで俺が喜ぶ訳ねぇし!!」

 さっきと同じ言い方なのに、さっきより嬉しさが隠しきれていないよ、早瀬くん。心なしか早瀬くんのほっぺがほんのり赤い気がする。



 「そういえば、結衣は?」


 「?…一緒じゃないけど、」

 俺の問いかけに早瀬くんは眉をひそめながら答える。結衣のことになると表情コロコロ変わるな、この人。



 「まだ残ってんのかな?結衣もここのアイス好きだからーー来ないか誘ってみる。」

 そう言って、結衣に電話する。


 「おー。 テスト勉強してんじゃね?今回も気が抜けねぇな。」

 どこか嬉しそうに、でも困ったようにそう言う早瀬くん。なんか、不器用だな、この人。ーーそんな早瀬くんを見て、なぜか和んでる俺が居て。


 だから。まさか、俺らがこうやっている間に結衣が矢口に迫られているなんて、思わなかったんだ。