私にはこれが限界。

「はい、よろしくおねがいします!」

そう言って笑った瞬君の笑顔はやっぱり人懐っこい犬みたいだった。


部活後、体育館の前でいつものようにこうちゃんを待たずに私は走って校門を出た。

今日は週に一回のピアノのレッスンの日。

三歳から続けているピアノは私の唯一の特技とも言える。

今ひいているのはモーツアルトのきらきら星変奏曲。

結構難しいけど、楽譜に音符が並んでいればいるほど、♯や♭がついていればついているほど燃えてくる私。



やっぱり私は、音楽が好きなんだな。

これからどんな音になっていくのかな。

どんな音を作っていけるのかな。

すごく楽しみだ。

みんなを支えられる、頼もしいベースにならなくちゃ!

一人で気合を入れると、ピアノ教室に向かって歩き出した。