夜明けのコーヒーには 早すぎる

 リョウコさんは眉根を寄せ、顎を擦りながら首を少し傾げている。記憶を思い起こす時の癖なのだろうか。ぼくがリョウコさんの返答を待ちながらお猪口を傾けていると、「あっ、そういえば!」という声と共に、指をパチンッと鳴らす音が聞こえた。
 ぼくがお猪口を置き、リョウコさんに目をやるのとほぼ同時に、「交換って訳じゃないんだけど、それに近いことはしたかな」とリョウコさんが言った。
 「近いこと、というと?」
 「えとね。奴が買い出しに行った後、少ししてから、わたしトイレに行ったの。それで用を足して戻ってきたら、わたしのグラスにビールが注がれてたんだ。トイレに行く前には空だったのによ。だから、奴の友達が注いだんだと思って、『どうも』とだけ言っといたんだけど、ほら、わたしビール飲めないでしょ。正直に嫌いだって言って、捨てるなりその友達に上げるなりしようかとも迷ったんだけど、お酒弱いし、そんなに呑むつもりもなかったから、取り敢えず放っておくことにしたの。そしたら、何だか知らないけど、その友達がもぞもぞしだしてね。わたしのことをちらちらと窺い出したのよ。どうしたんだろうと思ったけど、あまり話したことのない人だったから、取り敢えず、