スイセイは、十数年間の間悩み続けていた疑問を、再び思考する。
 カミングアウト―つまりは、自分のセクシュアリティを周囲に明かすという行為のことだ。
 それ以外でも、国や流行の度合いなどによって使われ方が違ってくる。
 だが、一貫して自ら秘密を明かすという意味で使われている様だ。
 ユウヤは、カミングアウトしているバイセクシュアルだった。
 そしてそれを誇りに思う反面、カミングアウトしていないスイセイに不満を持っていたのである。
 ユウヤの主張はこうだ。
 「過去、治療と称した同性愛者への虐待に、異性愛者への性的指向の帰順というものがあったそうだ。いや、過去というのは間違いで、頑迷固陋(がんめいころう)のヘテロセクシュアルによって、自分の子供への虐待は今も継続されているだろう。しかしながら、性的指向は虐待によって帰順したことはない。このことから考えても、未成年同性愛者への治療は幼児虐待と言える。それに、だ。おれは、帰順って言葉も許せねえ。何だ帰順って?異性愛者が善で、同性愛者が悪とでも言う気か?馬鹿馬鹿しい。性的指向は、持って生まれた物だ。言い換えれば、個を形成するパーツの一つだ。それを否定することは、個を否定することに等しい。