腹黒王子に囚われて

 
今度こそ瑛太を寝かせて、用事は済んだし帰ろうと思った。


「じゃあ、あたしは……」


だけど、立ち上がろうとしたあたしの腕を、瑛太が掴む。


「なあ、さっきの言葉」

「さっき?」

「甘えていいの?」

「え?」


何のことなのか最初よく分からなかったけど、確かに最初、そんなようなことを言った気がする。


風邪ひいて弱ってるときくらい、
人のことよりも自分の体を優先してもらいたくて
わざと冷たく突き放そうとした瑛太に、苛立ちを感じたから……。


「うん」



「じゃあ……
 寝付くまででいいから……

 手握ってて」




予想外のお願いに、言葉を失って……
だけど人って、弱ってるときほど、人の温もりが欲しがるんだよな…って思いだした。



「………いいよ」



うっすらと微笑んで、瑛太の手を握った。