腹黒王子に囚われて

 
「……そんなんじゃ、足りねぇから」

「え?」


急に声のトーンが変わって、驚き振り返った。

気づけば、テーブルの前にいたと思ってた瑛太は、あたしのすぐ後ろに立っていて……。



「多いだけじゃダメなんだよ。
 すべての人に、いい人に思われてねぇと」

「なんで?」

「……」



瑛太の答えには、全然共感できなくて、真っ直ぐと質問を返してしまう。

さっきまではしゃいでいた瑛太は、どこにもいなくて……。
どことなく苦しそうな顔……。



「怖いから」

「え?」

「人に拒まれるのが」



ジャー…と蛇口から出る水音だけが部屋に響く。


人に拒まれるのが怖い……?



眉をしかめて、瑛太の顔を見つめていると、
その顔が徐々に近づいてきた。