あたしを抱きしめたその腕は、
力強くて……だけど優しくて……
今までずっと白黒に見えていた世界が
一気に鮮やかに色づき始めてきた気がした。
拓先輩は顔色を変えずに
ただ真っ直ぐとあたしたちを見ている。
だけど心の中では、瑛太を睨んでいる。
「いまさら何?
お前、葵のこと、ちゃんと守れんの?」
静かに放たれる言葉は、
言葉だけでも怒りが滲み出ている。
だけど瑛太の腕の力が緩まることはない。
「葵」
頭の上から聞こえた愛しい人の声。
顔を上げ、その瞳を見つめた。
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