「よ」
「…っ」
先生に頼まれていた用事を済ませて、一人帰ろうとしたところ
まるで俺を待っていたかのように、昇降口で一人の男が立っていた。
そいつは以前、俺が力いっぱい殴った奴。
俺が世界で一番憎んでいる奴。
だけどそいつは、俺を見て笑っていた。
「……なんの用ですか…」
本当は、また顔を見せてきたこいつを、もっともっと殴りたい衝動に駆られてた。
だけどここは学校。
まだ校内に残る生徒が、俺たちを囲うように見守っている。
この前は傍に葵がいたから、頭にカッと血が昇って殴ってしまったけど
今は葵はいないし、直接的な怒りがわいてきているわけでもない。
だからあくまでも冷静に、
そいつ……上沢の顔を見返した。