「美咲、じゃあね」

「え?あれ、新條くんは?」


帰り、一人で鞄を持って帰ろうとするあたしを、美咲が当然の質問をしてきた。


「先生の頼まれごとをされてるみたいで、しばらく一緒に帰れないんだって」
「そうなんだー。じゃあ、しばらく新條くんとお近づきになれないのかぁ……」


と、人の彼氏に向かって、そんな台詞を吐く。

まあ、本心じゃないと分かってるから、何も思わないけど。


「新條くんも、先生からの用事とか、絶対に断れなそうだよね。
 葵なら即断りそうだけど」

「……あのねぇ…」


にたっと笑う美咲に、目を細めて睨む。

確かにそれは当たってる。


みんなの前での瑛太なら、絶対にどんな嫌な用事も引き受けそう。


だけど……

瑛太が今、その用事を引き受けてる理由はそれだけじゃない。


あたしを避けるための口実のようにも見えた……。