そのまま瑛太はあたしの家へ直行し
無言のまま部屋の中へ入った。


ようやく掴んでた腕の力が弱まり、その腕を自ら解いた。


だから……



「手……痛い?」



逆に、瑛太の手をそっととった。

その手はさっき拓先輩を殴った手で、殴ったほうの瑛太の手も少しだけ赤くなっている。

瑛太はなぜだか泣きそうな顔をすると、


「……」


ぎゅっとあたしを抱きしめた。

その腕は、さっきみたいに力強い腕ではなくて
そっとあたしを包み込むような優しさ。


その温もりが、あたしの凍てついてた心を溶かしていくようで……




「瑛太………

 あたし、ね……

 昔拓先輩に……」




ずっと胸の中にしまいこんでいた忌まわしい過去を
ぽつりと話し始めた。